STマイクロエレクトロニクス、 コンスーマ機器の高効率化により全世界で約100TWhの省電力化に貢献する デジタル電源制御ＩＣを発表

多種多様な電子機器に半導体を提供する世界的半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス（NYSE：STM、以下ST）は、PCやスマートフォンの低消費電力化に貢献し、サステナビリティを推進する最新のデジタル電源制御IC「ST-ONE」を発表しました。同製品は、USB Power Delivery（PD） 3.1に準拠し、ノートPCやスマートフォン用充電器を含む幅広いAC/DC電源アダプタの高効率化に貢献します。アダプタにST-ONEを組み込むことで、CO2排出量やプラスチック消費量の削減が可能です。

ST-ONEは、ハーフブリッジ・ゲート・ドライバとGaN（窒化ガリウム）パワー・トラジスタを集積した先進的なシステム・イン・パッケージ（SiP）「MasterGaN」と組み合わせて使用します。MasterGaNは、電源システムの低消費電力化と小型化に貢献します。

ノートPCは、オプションで省電力設定を行うことができますが、より高効率の電源アダプタを使用することで、さらなる低消費電力化が可能です。これにより、環境プロファイルおよびカーボン･フットプリントを改善することができます。ST-ONEは、従来の回路で放熱されていたエネルギーを回生する機能付きの電源制御が可能です。また、部品数を大幅に削減して回路設計を簡略化できるため、電源アダプタの堅牢性向上とコスト削減が可能になり、市場での採用拡大に貢献します。

STのインダストリアル & パワー･コンバージョン事業部ジェネラル･マネージャであるDomenico Arrigoは、次のようにコメントしています。「ST-ONEのエネルギー回生回路設計により、あらゆる電源アダプタが1%の高効率化を達成した場合、全世界で約93TWhのエネルギーを削減できます。これは原子力発電所15基分の出力に相当します。さらに、全世界で10億個の充電器にSTの技術が採用された場合、約20万トンのプラスチックと原材料を削減することができます。」

プラスチックなどの材料消費量の削減は、電力密度の向上によって達成されます。より小さな部品で大きな電力を扱える高い電力密度は、リサイクル･コストや環境コストの削減にも貢献します。

ST-ONEを搭載したリファレンス設計「EVLONE65W」は、1.8W/cm3以上のきわめて高い電力密度を備えています。標準的なスマートフォン用20W充電器と同じサイズ、同じ重量（37cm3で70g未満）で、ノートPCの充電にも対応する65WのUSB Type-C®アダプタを実現します。同製品は、ニュルンベルグ（ドイツ）で開催されたEmbedded World 2022に出展されました。

技術情報

ST-ONEは、新しい非相補型のアクティブ･クランプ･フライバック･トポロジに基づく設計に最適で、擬似共振フライバックといった他のトポロジと比較して高効率･高出力（65W以上）を実現します。

同製品は、オフラインでプログラム可能なArm® Cortex®-M0+ベースの電源コントローラ、高電圧スタートアップ回路、同期整流コントローラ、およびUSB PD回路を1チップに集積した世界初のデジタル電源制御ICです。

ST-ONEには、電力変換制御に必要なあらゆるペリフェラルが搭載されています。USB-PD通信は2次側に実装されており、強化されたガルバニック絶縁が採用されているため、1次側と2次側回路の間で安全に通信することができます。

また、先進的なワイド･バンドギャップ･トランジスタと高電圧ドライバを搭載した高集積のMasterGaNをパワー段に使用することで、より高いスイッチング周波数で動作するため、磁気部品の小型化により電力密度を最大化することができます。

ST-ONEは、64KBのFlashメモリを内蔵し、USB PDプロトコルと電力変換段のカスタマイズが可能です。

また、USB PD 3.1 PPS（プログラマブル･パワー･サプライ）認証済みのファームウェアもFlashメモリにプリロードされているため、標準的なアプリケーション設計用のターンキー・ソリューションとして使用可能です。

ST-ONEは現在量産中で、SSOP36パッケージで提供されます。単価は、1000個購入時に約3.70ドルです。

詳細については、ウェブサイトをご覧ください。